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札幌高等裁判所 昭和31年(ラ)51号 決定

抗告人 加賀谷正治

主文

原決定を取り消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

抗告人の抗告の趣旨ならびに理由は、別紙記載のとおりである。

先ず職権を以て考えてみる。競売法第三〇条第二九条第二項により同法に準用する民事訴訟法第六五九条第一項第六六一条によると、競売期日は、その公告の日から少なくとも十四日の後でなくてはならない。そうしてその公告は、(一)裁判所の掲示板と(二)不動産所在地の市町村の掲示板に掲示してこれをしなくてはならないのである。ここで一応問題となるのは、日を異にして右(一)、(二)の公告がなされた場合、どの公告の日から右十四日の期間を計算すべきかの点であるが、前示法条の趣旨に徴するときは、最後の公告の日からこれを計算すべきものと解するのが相当である。

そこで本件につきこれをみるに、記録中の昭和三一年七月二五日付「競売及競落期日公告」控と、札幌市長作成名義の昭和三一年七月三〇日付「公告掲示済通知書」によると、同年八月一〇日午前一〇時の本件競売期日の公告が(イ)札幌地方裁判所の掲示板に掲示されたのは同年七月二五日であり、(ロ)本件不動産所在地の札幌市の掲示板に掲示されたのは同年七月三〇日であることが認められるから、本件競売期日と最後になされた(ロ)の公告の日との間に民事訴訟法第六五九条第一項所定の期間を存しなかつたことが明白である。

されば原裁判所は、同法第六七四条第二項第六七二条第六号により本件競落を許すべきでなかつたのにこれを許可したのは失当であつて、原決定は取消を免れないのである。

よつて抗告人の抗告理由の判断を省略し、民事訴訟法第四一四条第三八六条第六八二条第六七四条第二項にしたがい、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 股猪薫 裁判官 臼居直道 立岡安正)

〈以下省略〉

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